昨日、講談社の総合雑誌「G2」のトークイベントに参加してきました。テーマは「激論 デジタル出版の未来」。場所は三省堂書店神保町本店でした(参加者は150名ほど)。
パネラーは、元・新潮社パーソナル事業部長で弁護士の村瀬拓男氏、株式会社ボイジャー代表取締役で「ミスター電子出版」の異名をとる萩野正昭氏、「ホリエモン」こと堀江貴文氏の3人です。
3人の主な主張は以下の通り。
【村瀬氏】
・改正著作権法に伴う国会図書館の蔵書デジタル化構想
→元の目的は閲覧による原本の破損を防ぐ(デジタルデータを閲覧させる。その範囲内では、著作権者の同意なしにデジタルスキャンができる)。日本人の誰もがその情報にアクセスできる状態になれば、紙の本が売れなくなることは充分、予想される。
・民主党が電子出版のルール化を急いでいる(参院選との絡み)。
・電子出版が当たり前になれば、出版社の売り上げは現在の半分になる。そうなると、出版社は社員の半数をリストラする必要に迫られる。
・現時点では、リアル書店に平積みされる広告価値は広告費に換算しきれないほどの価値がある。
【萩野氏】
・ボイジャーを創業したのが1992年。当時はマスコミに取り上げられたが、その後は「閑古鳥」状態。電子出版の統計が始まったのが2002年だから、その間の10年間がどのような状態だったかは、推して知るべし。それが昨年くらいから、また急に注目され始めた。
・本と同じ量の情報をデジタルデータで入手しようとしたら、本の価格の1,000倍かかる。
・紙とデジタルは本来、対立する概念ではない。デジタルは「広い意味での出版(パブリッシング)」のためにある。
【堀江氏】
・自分の本をデジタル化することは、「課金インフラを構築してくれる」という意味で大歓迎。
・図書館でのデジタル化には懸念あり。
→例えば、1,000円の本を300円~400円で閲覧できるならいいが、無料は本が売れなくなるので困る。
・著者自身が電子出版のシステムを作ることはできるが、運用が大変。課金のシステムの構築と運用が、出版社の役目になる。
・電子出版の時代では、出版社は「作家を抱えるプロダクション」へと変貌していく。
・書店はトークライブなど、「リアルな場での課金」を目指すことになる。そこでは「リアルな場でしか体験できないこと」を提供する。
・新人発掘(育成)システムとして、ブログが改めて注目される。
→これは小さな出版社がやるだろう。面倒くさいけれど、当たるとデカい。
・本や映画のチョイスは、すべてtwitterチョイスでしている。
→書店平積みのビジネスモデルは陰りをみせるだろう。
・同人誌の作家は既に電子出版へ流れている。
・日本の電子出版市場では、既に課金システムを持っているNTTドコモとYahooプレミアが、アマゾンとアップルの対抗馬になり得る。
・今のビジネスは「時間の奪い合い」なので、インターネットの動画ビジネスは成功が難しいかも?
1時間超のトークの中で一番、リアクションがあったのは、「集英社が『ワンピース』の次回作を電子書籍でしか出さないといったら、電子出版は一気に広まるのではないか?」という堀江氏の発言。
「集英社はやる気はないの?」と問うたところ、村瀬氏が「絶対にやらない。『ワンピース』も集英社にとっては、年間1,000タイトル刊行されるマンガの1つでしかない。売れない本も売ってくれる、既存の書店との関係を壊すことはできない」と即断したのが面白かった。
全体的には、「遥か彼方に光はあるが、そこまでの道のりはまだ誰にも分かっていない」という印象でした。まさに「トライ&エラーの繰り返し」しかない。その中で、堀江氏のいう『ワンピース』や『1Q84』などのメガヒットが出た時に、状況は一変に変わるのだと思う。
あなた出版社も、それを問われている。
